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くちぶえをふくぶし

口笛を吹く武士

林 不忘

「サンデー毎日」1932(昭和7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,467 字 · 21 页

青空文庫

」

一角は、握り拳をつくって、肘を張って、詰め寄るのだ。

「その、ありあまる才幹と、不世出の剣腕とをもちながら――。」

「や! こいつ、煽てやがる。」

「そうして年が年中ぶらぶらしておられるのは――いったい、どこかお身体でもお悪いのか。」

「ううむ。どこも悪うはない。ただ、酒が呑みたい。これが、病いといえば、病いかな。」

「さ、ですから、ここで一つ働きを見せて、千阪様に認められ、上杉家に抱えられて、相当の禄を食み、うまい酒をたんまり――と、拙者は、こう申し上げるので。いかがでござる。」

「それも、そうだな。」狂太郎は、とろんとした眼つきで、「わかっておるよ。人間、食わしてくれるやつのためには、何でもする。いや、何でもせんければならんことに、なっておるのだ。これを称して忠義という。なあ、赤穂の浪人どもが、小うるせえ策謀をしておるのも、忠義なら、それを防がにゃならんこっちも、忠義だ。忠義と忠義の鉢合わせ。ほんに、辛い浮世じゃないかいな、と来やがらあ――どっこいしょっ、と。」

立てた片膝に両手を突っ張って、狂太郎は、起ち上っていた。

「まいるぞ。」

「どこへ、兄者――。