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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
合間合間にどっと、血の沸くような鯨波(とき)があがる。その轟は夕陽の輝きですき透り、眩ゆい曠野じゅうの空気を震わして転がって行き、遠い夕焼雲の彼方が反響した。
ルスタムは、我知らず乗馬の手綱を控えた。彼は、目を凝してツランの陣を視た。
背後に喬木の疎な林を負った高地の略中央に、一つの大天幕(テント)が見えた。それから相当な間隔を置いて五つ真中のよりは小ぶりな天幕小屋がある。正面から西日を受けそれ等の天幕は燃えるように照った。ずっと左よりにもう一団右手高地のはずれ近く他の一団。その間をちらちら樹林から兵の屯所らしいものが眺められた。ルスタムは、特別じっと、中央の大天幕に目を注いだ。位置といい、大きさといい、それがツラン方の本営となっていることは疑いない。見ているうちにも幾人となく兵卒が出入りした。すると間もなく、この大天幕の裡から一人純ツラン風の装いをし、纏布に真赤な羽毛飾をつけた将らしい男が現われた。
出て来ると、その男はぐるりと高地の下に展開したイラン方の陣を瞰下した。そして、引かえすと、今度は別な四五人の将と連れ立って再び現われた。自分が中央に立って此方を指しながら、頻に何か説明している。