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ふるいど

古井戸

豊島 与志雄

「中央公論」1925(大正14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,433 字 · 43 页

青空文庫

夢をみて眠られないからって云うと、もう夢なんかみなくってもいいから、さっさっと寝ておしまいって……こんどからそんなことをすると、ひどい目に逢わしてやるって……。それであたしびっくりして、布団の中に頭からもぐりこんでしまったの。」

「お父さんがそんなことを云われたんですか。」

「ええ。だからあたし、いくら夢をみて眠られないでも、じっと我慢してるの。」

「どうしてまた、早く私に云わなかったんです。いくら聞いても隠してばかりいて……。これから何でも云うんですよ。」

「ええ。だって……。」

「なあに……。」

「お父さんが……。」

「何か仰言ったんですか。」

「ええ、あの、こないだ、お爺さんに云ったでしょう、恐い夢をみるって、嘘をついて……。あのことをあたしが云いつけたって、恐っていらしたの。そして、これから片山さんに何か云いつけたら、ひどい目に逢わせるって……。」

「でも、私に饒舌ったと、お父さんに云ったんですか。」

「いいえ。」

「じゃあ、お母さんに……。」

「いいえ、誰にも云やしないわ。」

「それじゃあ、どうしてお父さんに分ったんだろう。私も云やしないし……。」

「何でも分るのよ。