轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふるいど
古井戸
豊島 与志雄
「中央公論」1925(大正14)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,433 字 · 43 页
初めの慌てた気持が静まってくると、三人はぼんやり庭の中につっ立った。
「馬鹿な、すぐ井戸の中に飛び込むものか。」
突然響いた松木の腹立たしい声が、彼の頭にぶつかった。彼はかっとなった。
「そんな……そんなことを云ってる場合じゃありません。」
暗闇の中で、二人は顔をつき合してつっ立った。一秒……二秒……すぎた。彼はぶるぶると震えた。
「ふん、余り逆上せきって、図々しいにも程がある。」
云いすてて松木は、くるりと背を向けて、座敷の方へ歩き出した。
彼は石のように固くなった。声が出なかった。拳を握りしめてつっ立っていた。
その袖を、房子が捉えた。
「あなた、どうか……。宅は今気が立ってるところですから……。」
彼女のおどおどした様子に、彼は夢からさめたように我に返った。
「もう何にも仰言らないで……。それより光子の方が……。」
然し彼の頭は、俄にはっきりしてきて、松木から投げつけられた言葉が、胸一杯になっていた。
黙って足を返して、松木と反対に裏口の方からはいろうとすると、その板敷の上に小さな足跡が、黒い泥跡を残していた。彼は立止ってぼんやりそれを眺めた。
後からついて来た房子も、殆んど同時に足跡に気付いた。