轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふるいど
古井戸
豊島 与志雄
「中央公論」1925(大正14)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,433 字 · 43 页
「あ、これです、屹度。家にはいったのでしょう。」
彼は咄嗟に直覚した。いきなり駆け出して、二階に上ってみると、そこの三畳の方の隅に、光子は小さくなっていた。
彼は惘然とつっ立った。その膝頭へ、光子はふいに泣き出して取縋ってきた。
そこへ房子もやって来た。
「まあ! お前は。」
後は言葉がなかった。
彼はがくりとそこに屈んで光子の頭を撫でてやった。
房子が光子をなだめすかして、無理に階下へ連れてゆくまで、彼は一言も口を利かなかった。一人になると、押入を開いてみた。奥の方に、短刀は隠されたままになっていた。
彼はほっと息をして、六畳の方へ戻って、机の上に両肱をつき、頭をかかえた。
松木から真正面に投げつけられた言葉が、次第にはっきりした意味をとってきた。彼は自分と光子との間柄を考え廻して、自ら驚いて顔を挙げた。
真暗な夜の空に、星が粗らに光っていた。
下宿を変ろう。そう思いついて、まだ決心したともしないとも分らないうちに、眼の中が熱く涙ぐんできた。そしてまた机の上に頭をかかえた。
九
からりと晴れた初秋の麗かな朝日が、縁側一杯に当っていた。彼はそこに全身を投げ出して、今後の処置を思い煩っていた。