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こきんしゅうまきのご

古今集巻之五

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页

青空文庫

と云いだした。中島新地に馴染の女ができた、という噂を聞いていたので、おそらくその女を見せるつもりだろうと思った。

菊田氏のことを女中に頼んで「ふくべ」を出ると、意古井川に沿った片側町をくだり、照光寺橋に近い「山川」へはいった。そこで男女の芸者八人を呼んで、十一時過ぎまで賑やかに騒いだ。汲田の馴染がどの妓であるかわからなかったが、おしまという二十ばかりの芸妓が、縹緻もよし芸も達者で、これが永井につきまとい、永井のうるさがっているのが眼についた。

――おしま、おまえむだなことをしているぞ、汲田広之進が笑いながら云った。

――なにがむだなことですか。

――おまえがその男にいろめを使っているのは、枯木を笑わせようと汗だくになっているようなものだ。

――あら、永井さまはそんなにお堅いんですか。

――お堅いんだ、と豊水喜兵衛が云った。お堅いうえにやぼで無芸で、剣術がちょっとうまいだけのつまらない人間だ。

――触らないほうがいいぞ、と青木惣之助が云った。永井主計は微笑しながら、黙って飲んでいた。そういうところは彼の育ちのよさと、すなおな性質がよくあらわれている。