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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页
五
三月以来、亡き杉江どのについて、私はできる限りのことをしらべた。それを永井に書き送ろうと思っていたところだが、汲田と相談してからのことにするつもりである。
五
「お酔いになったのね」と云って、妓が顔の触れあうほど覗きこんだ、「苦しいんですか」
「暑い」と主計は眉をしかめた、「暑くってしようがない、もっとはなれてくれ」
「膝枕をしていらっしゃるのよ」
「いいからはなれてくれ」
「おちよさん、枕をちょうだい」とその妓が女中に云った、「ああいいわ、これでいいでしょ、なあさま」
妓は脇息を横にし、ふところ紙を当てて、主計に枕をさせた。その妓は若くて、名は小光というのだ。主計は眼をあげてお袖という年増を見、どうしたんだと云った。お袖は持っていた盃を、そっと膳の上に置いた。
「その人にひかされて、ちょうど八年いっしょにくらしました」とお袖は話を続けた、「ところは云えませんが、しょうばいは木綿問屋で、奉公人も六人くらい使ってたでしょう、かなり繁昌するお店でしたわ」
「そうじゃない」と主計がもの憂げに遮った、「男ができてどうとかという話だ」
「男ですって」
「男ができて、それといっしょになるために苦労したんじゃないのか」