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こきんしゅうまきのご

古今集巻之五

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页

青空文庫

永井家は代々中老職で、禄高は八百二十余石だったが、約十年まえ、六左衛門どのが五十八歳の元文三年に「課役騒動」が起こり、その責任を問われて中老職を免ぜられ、家禄も半分に削減された。六左衛門どのは隠居、主計は二十二歳で家督を継いだが、無役のまま今日に及んでいる。元文の出来事は相当こたえたろうと思うが、主計のようすには変化はみられなかった。いつも明るく、まっすぐで、誰にも好かれていた。――一昨年の二月、母堂みの女が病死され、その打撃が大きかったのだろう、六左衛門どのが卒中で倒れた。軽症だということだが、いまでも隠居所で療養を続けているくらいで、殆んど再起不能といわれている。永井はそれまで独身であったが、そういう事情で女手が必要にもなったし、御城代酒田氏のすすめで結婚をした。

妻女の名は杉江、年はそのとき十七歳であった。実家の吉原氏は百十五石の寄合格で、父の市郎兵衛どのは納戸支配を勤めている。きょうだいは四人、志田へ嫁した姉の直江、次が杉江、下に十五歳の市三郎と、十三歳の松江という妹がある。私は杉江という妻女をよく知っていない、結婚してから三年になるが、永井は「病父がいるから」