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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
世に恐るべきは偏理的哲学者と、執迷的妄信者なり。彼らはその周囲に何の頓着する所なく、その見る所直ちにこれを語り、その語る所直ちにこれを行わんとす。彼ら自身即ち社会不調和の要素にして、彼らは如何なる時世においても、社会の治安と相容れざる厄介物なり。切言すれば彼らは革命の卵子なり。経世家は然らず、時勢を観、人情を察し、如何なる場合においても、調子外れの事を為さず。その運動予算の外に出でず。その予算成敗の外に出でず。されば彼らは恐るべき大力量あるも、殆んど恐るべき運用をなさず。故に恐るべきはビスマークにあらずして、ルーソーにあり。ハンプデンにあらずしてミルトンにあり。松平楽翁にあらずして、山崎闇斎にあり。島津斉彬にあらずして、吉田松陰にあり。彼らはその力量に比較して、動もすれば大なる出来事の張本人たり。何となればその結果に頓着せずして、その前提より奮進すればなり。いわゆる晴天に霹靂を下し、平地に波瀾を生ずるもの、実に彼らの仕業といわざるを得ず。徳川時代豈にその人なからんや。
文教を楯として天下を治めんとしたる徳川政府は、早くも文教を箭として、己に向い弓を挽くものを見出しぬ。