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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「反対というと? ハテ何んでしょうな?」

「実際的の学問なのさ。うん、そうだ科学とかいった」

「科学? 科学? こいつ解らないぞ」

「建築術なんかうまかったそうだ」

「建築術? これは解る」

「それから色々の造船術」

「造船術? これもわかる」

「それから色々の製薬術」

「製薬術? これもわかる」

「大砲の製造、火薬の製造、そういう物もうまかったそうだ」

「恐ろしい奴でございますな」

「学問があって大豪で、それで海賊というのだから、随分ととらえるには手古摺ったものだ」

「それはさようでございましょうとも」

「その上神出鬼没と来ている」

「さすがは名誉の海賊で」

「何しろ船が別製だからな」

「自家製造の船なのでしょうな」

「うん、そうだ、だから困ったのさ。……その上、いつも日本ばかりにはいない」

「ははあ、海外を荒らすので」

「支那、朝鮮、南洋諸島……」

「痛快な人間でございますな」

「海賊係りの役人どもも、これには全く手古摺ったものだ」

「それでもとうとう大坂表で、とらえられたそうでございますな」

「大坂の役人めえらいことをしたよ」

「どうやら万事大坂の方が、手っ取り早いようでございますな」

「莫迦をいえ、そんなことはない」