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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「仲間が五人殺されました」

「いずれ抵抗したのだろうな?」

「敵は大勢、味方は小人数、争ったところで追っ付きません」

「……これもいけない」

と平八は、呟かざるを得なかった。

加賀屋を出るとその足で、尚二、三軒廻船問屋を、郡上平八は訪問した。いずれも諸方の近海で、海賊に襲われた手合いであった。しかるに答えはどれも同じで、櫓格子は黒塗りであり、帆の形も尋常であり、大砲などは備えていず、海賊どもは乱暴で、武士的などとはいわれない。――と、こういう返辞であった。

「解った」

と平八は自分へいった。「この海賊は赤格子ではない。手口を見れば明らかだ。他の奴らに相違ない。……さて、では肝腎の赤格子は、いったいどこにいるのだろう?」

かえって見当がつかなくなった。

「それはとにかく、腹が減った。きょうは少々動き過ぎたからな」

で、平八は駕籠を返し、手近の縄暖簾へ飛び込んだ。

こんなことは彼にとって、ちっとも珍らしいことではない。

彼の前に職人がいた。威勢のいい江戸っ子で、扮装の様子が船大工らしい。

「おお初公、変じゃないか、どう考えても変梃だよ」

一人の職人がこういった。