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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「うん、どうやらそうらしい」「足を左右に踏ん張ったでは、進みもひきもならないからな。居所攻めという奴だな」「そうだ、そいつだ、居所攻めだ。胴を取られても小手を打たれても、擦った擦ったといって置いて、敵が急って飛び込んで来るところを、真っ向から拝み打ち、ただ一撃でやっつけるのだ」「観世、おれとはどうだろう?」「平手、お前となら面白かろう。しかし、あるいは覚束ないかもしれない」

いわれて造酒は厭な顔をしたが、田舎者の方をジロリと見た。と田舎者は相も変らず、ノッソリとした様子をして、道場の真ん中に立っていた。たいして疲労れてもいないらしい。審判席では定吉先生が、さも驚いたというように、長い頤髯を扱いていた。眉の間に皺が寄っていた。神経的の皺であった。

「秋田藤作は駄目としても、観世銀之丞は上目録だ、それが一合も交わさずに、引き退くとは驚いたな。非常な腕前といわなければならない。しかしどうも不思議だな、そんな腕前とは思われない」

平手造酒と田舎者

定吉は思案に余ってしまった。「これはおれの眼が曇ったのかもしれない。どうにも太刀筋が解らない。とまれこやつは道場破りだな。