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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「いやはや態の悪い話ではあったぞ」「それというのもこのわれわれが、人を斬っていないからだ」「残念ながら御意の通りだ」「観世、お前も残念と思うか?」「ナニ、大して残念でもないな」「貴公はそういう人間だ」「アッハハハ、仰せの通り」「張り合いのない手合いだな」「では大いに残念と行くか?」

すると造酒はニヤリとしたが、

「観世、今夜散歩しよう」

「散歩? よかろう、どこへでも行こう。……が、散歩してどうするのだ?」

すると造酒はまた笑ったが、

「観世、貴公は知っているかな、当時江戸の三塾なるものを」

「ふざけちゃいけない、ばかな話だ、三児といえども知っているよ。まず第一が千葉道場よ、つづいて斎藤弥九郎塾、それから桃井春蔵塾だ。それがいったいどうしたのだえ?」「その桃井の内弟子ども、吉原を騒がすということだ」「そういう噂は聞いている。無銭遊興をやるそうだな」

「だからこいつらは悪い奴だ」「義理にもいいとはいわれないな」「こんな手合いは叩っ切ってもいい」

これを聞くと銀之丞は、造酒のいう意味がはじめてわかった。で彼は声をひそめ、

「平手、辻斬りをする気だな」

すると造酒はうなずいて見せたが、「厭なら遠慮なくいうがいい」