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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

「何の真似をしろ?」

「ちと正直に淡泊になさいと云うんです」

「お前は愚物の癖にやに強情だよ。それだから落第するんだ」

「落第したって叔父さんに学資は出して貰やしないわ」

雪江さんは言ここに至って感に堪えざるもののごとく、潸然として一掬の涙を紫の袴の上に落した。主人は茫乎として、その涙がいかなる心理作用に起因するかを研究するもののごとく、袴の上と、俯つ向いた雪江さんの顔を見つめていた。ところへ御三が台所から赤い手を敷居越に揃えて「お客さまがいらっしゃいました」と云う。「誰が来たんだ」と主人が聞くと「学校の生徒さんでございます」と御三は雪江さんの泣顔を横目に睨めながら答えた。主人は客間へ出て行く。吾輩も種取り兼人間研究のため、主人に尾して忍びやかに椽へ廻った。人間を研究するには何か波瀾がある時を択ばないと一向結果が出て来ない。平生は大方の人が大方の人であるから、見ても聞いても張合のないくらい平凡である。しかしいざとなるとこの平凡が急に霊妙なる神秘的作用のためにむくむくと持ち上がって奇なもの、変なもの、妙なもの、異なもの、一と口に云えば吾輩猫共から見てすこぶる後学になるような事件が至るところに横風にあらわれてくる。