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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

しかしこの大きな頭の、古い名の、しかも自分の監督する生徒が何のために今頃やって来たのか頓と推諒出来ない。元来不人望な主人の事だから、学校の生徒などは正月だろうが暮だろうがほとんど寄りついた事がない。寄りついたのは古井武右衛門君をもって嚆矢とするくらいな珍客であるが、その来訪の主意がわからんには主人も大に閉口しているらしい。こんな面白くない人の家へただ遊びにくる訳もなかろうし、また辞職勧告ならもう少し昂然と構え込みそうだし、と云って武右衛門君などが一身上の用事相談があるはずがないし、どっちから、どう考えても主人には分らない。武右衛門君の様子を見るとあるいは本人自身にすら何で、ここまで参ったのか判然しないかも知れない。仕方がないから主人からとうとう表向に聞き出した。

「君遊びに来たのか」

「そうじゃないんです」

「それじゃ用事かね」

「ええ」

「学校の事かい」

「ええ、少し御話ししようと思って……」

「うむ。どんな事かね。さあ話したまえ」と云うと武右衛門君下を向いたぎり何にも言わない。元来武右衛門君は中学の二年生にしてはよく弁ずる方で、頭の大きい割に脳力は発達しておらんが、喋舌る事においては乙組中鏘々たるものである。