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よいことをしたよろこび
善いことをした喜び
小川 未明
「童話」1921(大正10)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,586 字 · 6 页
ほんとうに暖かな、よく晴れた空に太陽が燃えて、風すらない秋日和でありました。大きな銀杏樹の上で、小鳥が鳴くほかに、だれもおばあさんを脅かすものはなかったのです。
「おばあさん。」と、雑誌に読み飽きたさよ子は、あちらの石段から、こちらを向いて、さびしいので呼びかけました。
もし、おばあさんが機嫌がよかったら、そばへいって、いま読んだおもしろいおとぎばなしを、おばあさんに聞かしてやろうと思ったのです。それは金銀宝石を積んだ幽霊船が、ある港へ着いたときに、そのお金や宝石がほしいばかりに、幽霊を自分の家につれてきて泊めた、欲深者の話でありました。
「おばあさん、おもしろいお話を聞かしてあげましょうか。」と、またさよ子はいいました。
けれど、おばあさんは、返事をしませんでした。
これはきっと機嫌がよくないのだろうと思って、さよ子は、また雑誌を開いて、ほかのお話を読んでいたのでありました。
「うるさい子だ。何度呼んでも黙っていてやろう。」と、おばあさんは、口の中でいって、知らん顔をして銭を勘定していました。
そのうちおばあさんは、やっと銭を勘定してしまいました。