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もふく
喪服
久生 十蘭
「文學界」1957(昭和32)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,793 字 · 24 页
浜口 (めざましく昂奮して)おれには承服できない……あいつはさんざんな女出入りで、男の怨みも女の怨みも、背負いきれないほど背負いこんでいるやつだから、そういうつづきで、事故に紛らして、なにかされたような形跡はなかったのか。
秋元 警察では単純な事故だったといっております。
静江 単純というのは、どういうことなんでしょう。
秋元 根岸の七曲りのような特別な場所の事故は、どれでも判で捺したようにおなじで、どこかに型に外れた動きが一カ所でもあれば、すぐわかるものなんだそうです……警察では、追突されたようすも、接触して煽られたような形跡もなかったといっておりますがね。
静江 事故があったのは、何時ごろのことだったんです?
秋元 午前二時から三時ごろまでの間……夜半から降りだした雨が、二時ごろにあがったのですが、それが凍りかけていたという間の悪い折で……坂のおりかけから調子が悪かったらしくて、切通しの土手にのしあげた形跡があります……それで、凍った坂道をズルズルと後落して、堀端で車をひっくりかえしたまま堀へ突っこんだということらしいです。
間。
浜口 (腕組みをして深くうなだれる)一郎は死んだか。