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しじゅうふわく
四十不惑
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页
契機の芙蓉模様
大した負担になることでもないし、和服姿の小柴さんと並んで坐れる仕事だ。快く折れよう。そう決心して、若し易者に見て貰ったら、此年は教える運命と教わる運命がかち合うと言ったかも知れないと思った。おかしくなって、床の中で苦笑した。
契機の芙蓉模様
僕は妻の懇請に応じて、小柴さんと一緒にお茶を始めた。大分後輩だから驥尾に従う。しかしお師匠さんと同棲している有難さ、補講をして貰える。本気になってやれば、茶道もそう馬鹿にしたものでない。興味が出て来た。
「課長さん、オホヽ」
と或日会社で小柴さんが近くに人のいないことを確めた。
「何だね?」
「到頭奥さまの軍門にお降りになりましたわね。耄碌しないなんて威張っていらしったけれど」
「仕方がないさ」
「御台所さまはやっぱりお怖いんでございましょう?」
「それよりもあなたと一緒ってことが大きなインジュースメントですよ」
「まあ! 本当?」
「えゝ。御迷惑?」
「どころか、私、嬉しいわ」
「お蔭でお茶そのものにも興味が出て来ました」
と僕は満足だった。
妻も機嫌がいゝ。今までは唯の話だと思って相手をしていると、釣針が仕込んであって、よく引っかゝったものだが、昨今はその心配がない。