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しじゅうふわく

四十不惑

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页

青空文庫

僕も小柴さんを信じ切っていたのだった。そういうことは自由ですと言うのだから小憎らしい。親に向ってもそう主張したそうだ。そこで親父さん、狂乱のようになって飛び込んで来たのだった。

僕は青年画家の身許を調査した。日本橋の鰹節問屋の次男坊で、学校の成績もよく、将来に望みを嘱されている新進と分った。絵かき貧乏でなくて、分家をすれば相当分けて貰える。正直のところを申上げますと愛人らしいものがあるようでございますよというのに驚いたが、それはやはり小柴さんだった。両親も承知していた。官吏の家庭よりも鰹節問屋さんの方が頼もしい。それにしても一々親へ通じて置くところを見ると、青年の純情が分る。

良縁と認めて、僕達夫婦は媒酌の労を執った。会社で一番綺麗なタイピストだ。若い社員が大部分列席して、披露宴は頗る盛大だった。

その直後、

「あなた、掌中の玉を尾崎さんに取られてしまって、気抜けがしたようじゃありません?」

と妻が言った。

「そんなこともないよ。おれはもう不惑だから」

「本当にもう惑わないで下さいね。若い人はあなたのようなお爺さんなんか何とも思っていないんですから」

「お爺さんじゃない。