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そうせきしとわたし
回想 子規・漱石
高浜 虚子
高浜虚子『回想 子規・漱石』。同一底本的分册已合并为一书。收入:漱石氏と私、子規居士と余。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 页
一段高い学府に籍を置いたという厳粛な感じに支配せられて燈下に膝を折って下読みにいそしむ事も多く、同時にまた松山の狭い天地を出て初めて大きな都に出たという満足の下にその千年前の旧都を飽きもせずに彷徨き廻る日も多かった。歴史があり、物語があり、繁華がある。それらは暫くの間若い心を躍らせて常に憧憬の衢であった東都の空を想う念も暫くの間は薄らいでいた。
その時突然机上に落ちた一個の郵便は暫く静まっていた余の心をまたさわ立たしめずにはおかなかった。それは『俳諧』と題する雑誌であって、居士が伊藤松宇、片山桃雨諸氏と共に刊行したものであって、その中には余が居士に送った手紙の端に認めておいた句が一、二句載っていた。碧梧桐君の句も載っていた。――碧梧桐君は一年休学したために中学の卒業は余よりも一年遅れその頃まだ京都へは来ていなかったのである。そうして子規居士との音信の稀であったにかかわらず余と碧梧桐君との間の書信の往復は極めて頻繁であった。それには文学以外の記事も多かった。――自分の作句が活字となって現われたのは実にこの『俳諧』を以て初めとする。そうして我らの句と共に並べられた名前に鳴雪、非風、飄亭、古白、明庵、五洲、可全らの名前があった。