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そうせきしとわたし

回想 子規・漱石

高浜 虚子

高浜虚子『回想 子規・漱石』。同一底本的分册已合并为一书。收入:漱石氏と私、子規居士と余。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 页

青空文庫

依然として執拗な処はあったけれども、漸く親しくなって見るとこれもまた老いたる憐れなる善人であった。

居士は車に乗って黄塔君の宅に出掛けた。余はその車に跟いて行きながら万一を心配したが、それも無事であった。黄塔君と三人で静に半日を語り明して帰った。

いよいよ須磨の保養院に転地するようになったのはそれから間もないことであった。病院を出て停車場に行く途中で、帽のなかった居士は一個のヘルメット形の帽子を買った。病後のやつれた顔に髯を蓄え、それにヘルメット形の帽子を被った居士の風采は今までとは全然異った印象を余に与えた。

保養院に於ける居士は再生の悦びに充ち満ちていた。何の雲翳もなく、洋々たる前途の希望の光りに輝いていた居士は、これを嵐山清遊の時に見たのであったが、たとい病余の身であるにしても、一度危き死の手を逃れて再生の悦びに浸っていた居士はこれを保養院時代に見るのであった。我らは松原を通って波打際に出た。其処には夢のような静かな波が寄せていた。塩焼く海士の煙も遠く真直ぐに立騰っていた。眠るような一帆はいつまでも淡路の島陰にあった。

ある時は須磨寺に遊んで敦盛蕎麦を食った。