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あかげっと しなあちこち

国枝史郎歴史小説傑作選

国枝 史郎

国枝史郎『国枝史郎歴史小説傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤げっと 支那あちこち、印度の詩人、今昔茶話、支那の思出、世界の裏、全体主義、独逸の範とすべき点、日本上古の硬外交、秀吉・家康二英雄の対南洋外交、ヒトラーの健全性、ローマ法王と外交。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,334 字 · 121 页

青空文庫

兎まれヘンリー四世は吹雪や雪崩れに覆われたアルプスを越えて、北イタリヤのカノッサの城へまで辿って行ったのである。それはこの時グレゴリー七世がローマを発ってこの城に滞留していたからである。

ヘンリー四世は、一人で城を訪ね法王へ謁を乞うた。すると衛士は、

「汝此処に立って法王の許可を待て」

と、法王の旨を伝えた。

そこでヘンリー四世は、髪をかむり、洗足で、毛織の服を着て、すなわちみすぼらしい平民の姿で城門の前に佇み、氷柱むすぶ厳冬の候を外気にうたれながら法王面謁の許可の下るのを待った。その日が暮れ翌日となり、その翌日が暮れて三日目となったが法王は面謁しようとはしなかった。見るに見かねて斡旋の労を取ったのは、このカノッサの城主の奥方であった。そこではじめてグレゴリー七世はヘンリー四世に面謁を許し、面謁をゆるされた破門の皇帝は城内に走入り、法王の足を抱き泣いて罪を謝すこと数時間、ようやく破門を免除された。

何んという羅馬法王の権力ぞや!

それにしても教権はあっても兵権の無い彼が暴挙に近いこの超非常事件を断行し、羅馬法王の位置をして、皇帝の上遥に、九鼎大呂の如く重からしめたのは、彼の如何な気質から来ているのであろう? 狂信家なるが故であろうか? いや彼が教界刷新のやり口が秩序整然としていて変質者流の夫れでないところ