轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

浪華の蘆も、伊勢で浜荻。

またしてもこの言葉を、思い出さないわけにはゆかなかった。

妙にしみじみいのちの底からわびしい気がした。

「お前は別だが、お前のほかじゃ、いっそあの盲目の阿呆陀羅坊主がこの一座じゃ罪がなくていい」

今松は言った。

名を、浮世丸。

五十がらみの盲目の大坊主で、小さな木魚二つ持って阿呆陀羅経ばかり歌うこの座でたった一人の色物。

いつも焼酎ばかりあおって、盲目のくせにこんな大きな懐中時計を帯の間へ挟んでいては、

「オイ浮世丸。何時や今」

からかって皆が訊くと、

「何時やわからん。勝手に見てくれ」

すましてその玩具みたいな大きな時計を、ヌッと突きつけて見せた。

「うん、あいつだけや話せるのは」

いかにもというふうに海老団治はうなずいて、

「その代わり、あいつ大阪の生まれやない」

「どこだい生まれは、あの大坊主の生まれは」

「五島列島」

「エ、五島列島?」

肝を潰して今松は、

「イカだね、まるで」

連日の満ち足りなさも忘れて二人は笑った。

ソヨリとも風がない米子停車場前の招福館という寄席の楽屋。

今夜もガランと入りのない客席の、ところどころに座っているお客の顔が思いなしか、余計暑苦しかった。