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よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

岡村は、旅廻りの壮士芝居専門の興行師で、いくらでも金を持っていた。しかも辣腕を謳われている男だった。

目ぼしい師匠に従いているものは師匠とともに苦もなく加入してしまっていたけれど、海老団治のような、今松のような、孤立無援のものは、なにかと加えてもらうのに骨が折れた。

海老団治の父親の海老蔵も、ひと月ほど前、近江のほうへ巡業に行っていて、やはりこの様子はまだ知っていないらしかった。で、息子のために、今度の組合へなんの橋渡しもしておいてはくれなかった。

改めて二人は、紅梅派加入を申し込んだ。

みすみすいまだ売出し前の若手二人。

入れるまでに十日ほどかかった。

わずかばかりのお金を七所借りして二人は、その日までをつないだ。

二人とも月給。

海老団治が十八円。

今松は十五円にも足りなかった。

どうやら働き口にはありつけたが、今までのような寄席の組織とちがって、なんだか区役所へでも勤めているような勝手のちがったものがあった。

個人個人でやっている寄席とはまったく事変わり、芸人との親身というものが毛頭なかった。

それには鬼鬚を生やし、いつも厳しく五つ紋の羽織を着て壮士上がりのような振る舞い多い興行主の岡村は、大真打たちには空々しいほど空世辞を言い頭を大地へすりつけんまでにして、精いっぱいに待遇したが、反対に下っ端