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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页
三
そうしてそのとき自分の前へ投げられてきた月給袋を、うやうやしく押しいただいた、ほかの落語家たちと同じように。
ばかりじゃない、いつまでもいつまでもその下げたまんまの頭を上げようとしなかったのだった。
「…………」
白砂青松の絶勝を窓外に、颯爽とトンネルへ入っていった自分の列車がひとたびそのトンネルを出てみたら、たちまちや辺りの絶景は大震火災の修羅場と変わり果てていた、ちょうどそのごとくにも今松は茫然自失した。
いくら考えても考えても、心の平仄が合わなかった。
…………。
三
「あんた、ほんまに奇怪に思いなはったやろ。面目ない。笑うて、たんと笑うておくれやっしゃ、今松君」
その日、連れ立って今松と紅梅派本部を出た海老団治は、卑屈に黙りこくってしまったまま、ここ島の内、汁屋の狭い土間の縁台に腰を下ろすと、言葉まで急に他人行儀になって、力なく盃をさしてきた。
「大きいものがいい」
まだムシャクシャがおさまらない心持ちで気難しそうに首を振ると東京の鮨屋にありそうな部厚な湯呑を、今松は取り上げた。
「いか」
「たこ」
「はも」
「ぐち」
「たちうお」
小さな新しい木の札が正面の壁のあたりへ芝居の小道具のように掛け並べられている。