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よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

お八重

目前に迫った金儲けのことを考えて、しきりと心が舌なめずりをしているのだった。

「お前さん、ネエお前さんてば」

歯切れのいい若い女の声が、耳もとでした。

ハッと圓太郎はわれに返った。色白の目鼻立ちの粗く美しいキリリとした女が、大太鼓の薄暗い傍らにスッと立っていた。ついこの間母親に死なれ、今では圓朝の家に引き取られている下座のお八重だった。

「ア、お八重ちゃん」

柄にもなく顔中を真っ赤にして圓太郎は、ドキマギした。

お八重

「お前さん、さっきの話、ほんとに儲かると思ってるの」

勝次郎の帰ったあと、お八重は言った。

「ウン」

圓太郎はコクリとした。

「ほんとに」

牡丹の花のようなお八重の顔が、ジイーッと覗き込んできた。

「だって盆と正月が一緒にくる商売を始めるンじゃねえか。古今亭の兄貴が太鼓判を押したンだ。儲からねえはずがあるもンかな」

「マー、じゃアやっぱりあんた本気にしていたのねえ。注意してあげてよかったワ」

大柄の弁慶縞の襟をかきあわせて、お八重はホッとしたようだった。思いなしか、ランプの光に浮き出しているパッチリした美しい目が濡れていた。

「ネエ、圓太郎さん。よく考えてみてちょうだい。