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ざいがくりゆう

在学理由

豊島 与志雄

「日本評論」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 页

青空文庫

「だって君、そんなことは、学校を出てからだってやれるだろう。」と矢杉は云った。

「やれますけれど、学校を卒業すると、学費が貰えません。」

「学費が……それじゃあ、誰からか補助でも受けてるのかい。」

「父がいませんから、伯父から貰っています。」

「伯父さんなら、卒業してからでも、生活費を助けてもらえるだろう。」

「それはいけません。卒業すれば、働かねばなりません、働くとなると、勉強する時間がなくなります。」

「すると、伯父さんは、学部が三年で卒業出来ることを、知らないのかい。」

「知っています。」

「そして、早く卒業しろと云わないのかい。」

「希望しているでしょう。然し、いろいろ勉強した方がよいことも、よく知っています。」

「君の話はよく分らんよ。伯父さんにそれだけ理解があるなら、早く卒業した方が……授業料だけでも無くて済むじゃないか。」

「然し、卒業すれば、働かねばなりません。」

「学校にいるつもりで、勉強だけすればいいじゃないか。」

「そういきません、道徳の問題です。」

「道徳……そんな道徳があるもんか。卒業出来るのを、いつまでもぐずついてるのは、伯父さんに対してなお不道徳だろう。