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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
と言う声が聞えた。皆の神経が緊張した。そこへ、土間へ、一群の洋服を着たのや、浴衣がけのや、二十人近い人間が、十分に酒を飲んでいるらしく、髭を生やしたもの、眼鏡をかけたもの、まだ生若そうなやつなどが、みな酒に酔っぱらって、顔を赤くしてはいって来た。
「お幸いるか、お幸!」
金縁の眼鏡をかけ、肉の豊かな頬を青く剃り、髭を短く刈った四十前後の、乳色の背広を着た男が怒鳴って這入って来た。
「川村さんじゃないの」
「そうだ、そうだ、その川村だ。今日は己の課の奴を皆連れて来たんだ――さ、皆上りたまえ――おい時子、大広間へみんなを案内しないか――おう、これは、これは、女将さん、相変らず達者で、あはっはっはっはっ」
女将はいそ/\と立ち上がった。あまりいい客ともいわれないが、川村が県庁の土木課の課長で、重要な地位にいることを知っている女将は、まるで歓迎しないわけでなかった。時子も菊龍も富江も立ち上がった。茂子も立ち上がらねばならなかった。
「さ、どうぞ此方へ」
四人の芸妓がすらりと褄をとり、いい立姿を見せて階段をのぼるのに引きずられるように、はじめは入ることを渋っていたもの共も一斉に二階にあがった。