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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

しかし出来ないことだとは言えまい。出来ることかも知れないではないか? そうです、出来ることです。きっと自分がやってみせます。死んでもやってみせます――ああ」と彼は深碧の大空を仰いで、「やらして下さい」と何かに祈るように跪いた。「使命」の感が彼に燃えたのである。

平一郎は午後四時頃平気な様子で家へ帰った。母へ自分から停学のことを知らす気になれなかった。知れるなら仕方がない、知れなければどうかして知らしたくないと考えた。どうしてよいか分らなかった。しかし、どうにかしなくてはならないものが彼の根元に蠢めき始めていた。彼はぐっすり夕暮まで寝た。

「平一郎、平一郎、どなたか戸外で呼びに来ていらっしゃるそうですよ」

彼は起きた。米子が笑いながらお光と彼の顔を見比べていた。

「誰?」

「吉倉という方」米子は知っていますよという風に微笑んだ。

「本当に?」

「ええ。戸外に待っていらしってよ」

「ちょっと行って来ます」平一郎は室を出た。長い土蔵の横の廊下を通るとき米子が「美しいお嬢さまね」と言った。戸外は薄暗くてうそ寒い晩景に軒並の電燈が輝いていた。

「平一郎さん」その声は涙を含んでいた。