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ちきゅうようさい

地球要塞

海野 十三

「譚海」1940(昭和15)年8月~1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,834 字 · 144 页

青空文庫

階段は、もうX大使の頭のところで、つかえている。私は、かなわぬまでも、ここでX大使を追いつめて、せめて足でも捕えて、曳き摺りおろしたい考えだった。

ところがX大使は、なおも悠々と、階段の上にのぼっていく。私は懸命に追いかけた。そして、ついに大使の足を捕えた。

が、なんたる不思議! 私の手は、階段の上の防水扉にいやというほどぶっつかった。見れば、X大使の姿は、そこになかった。有るのは防水扉だけであった。

といって、防水扉は、決して開いたわけではなかった。もし防水扉が開けば、海水が、どっと下におちてくるだろう。しかし、只の一滴の海水も階段の上から降ってこなかった。だから防水扉は絶対に開かなかったのだ。しかもX大使の体は消えてしまったのだ。恰も大使の体は防水扉を透過して、クロクロ島の外に出た――と、そうとしか考えられないのであった。

怪また怪!

私は、階段に取り縋ったまま、大戦慄の末、全身にびっしょり汗をかいた。

大戦慄――夢かテレビジョンか

私は、それから小一時間も、なにをする元気もなく、階段の下にうずくまっていた。

おお、X大使!

なんという恐ろしい人物にめぐりあったものだろう。