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かいとのはなし

垣内の話

柳田 国男

「民間伝承十二卷八・九號」1948(昭和23)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,985 字 · 14 页

青空文庫

それを計画的に利用するようになって、荘家はただ管理者の占拠する所となった。その御田屋(オタヤ)の遺風は南部領などに久しく存し、飛騨の高山の周囲にも、その名称だけはこのごろまであった。それがさまでの政治的煩累にもならずに、小さく保存せられていたのが垣内だったと見てよかろう。弊害と由来とを混同して、まず名称を毛ぎらいするようなあわて者たちとは、この問題を話し合うことはできない。

今では過ぎ去った必要になってしまったが、垣内はもと一つの農村の成長力であった。古く開けた村には垣内がなく、新らしい土地でも全部が垣内には分割せられていない。垣内のある所はたいていは片端に偏して、古くからのイナカを取り囲んでいる。これを設けたために人は働く場処を得、食料の補給を外に仰ぎ、または行方もなく外に散ってしまわずにすんだ。もちろんここにも細小農の分裂は行われたが、垣内山の存在はなお一つの余裕であって、他に比べると共住者の相助がやや容易に行われ、大地主の圧迫は垣内以外の地よりも少なかったかと思われる。現在もなお続いている部落組織は、多くは近世になってからの発明らしく、それも将来を支配するまでの力はないかもしれぬが、少し手を掛けたら日本再建の、足場ぐらいは得られよう。