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うもれたにほん

埋もれた日本

和辻 哲郎

――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,399 字 · 43 页

青空文庫

そこで玉王はいら立って、老年のために出頭しない者があるならば、引き出物をしても連れて来いと命じた。そのとき、四か国の境の山中に、世を離れて住んでいる老人夫婦があることを言い出したものがあった。それが取り上げられて、ついに探索隊が派遣された。

探索隊は深い山の中をさがし回って、ようやく老夫婦を見いだしたが、その老夫婦は、この十七年来人に逢ったことわずかに二度であると語り、浮世に出て来ることを肯じなかった。探索隊の役人たちは、やむなく老夫婦を縛り上げ、笞うち、責めさいなんで、山から引きずりおろして来た。里に出て宿を取るときには、逃亡を怖れて老夫婦に磨り臼を背負わせた。老夫婦の受けた苦難はまことに惨憺たるものであったが、物語は特にその苦難を詳細に描いている。それは玉王の前に連れ出されたときの親子再会の喜びをできるだけ強烈ならしめるためであろう。しかも作者は、この再会の喜びをも、実に注意深く、徐々に展開して行くのである。まず玉王は、連れ込まれて来た老夫婦をながめて、それらを縛り上げている役人たちをしかりつけ、急いでその縄を解かせる。そうしてこの寛仁な国司が十七年前に鷲にさらわれた愛子であることを、一歩ずつ老夫婦に飲み込ませて行く。