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キリストしんとのなぐさめ
基督信徒のなぐさめ
内村 鑑三
明治二十四年四月十九日いわゆる……「基督信徒のなぐさめ」警醒社書店、1924(大正13)年2月25日改版<br>“If I can put……「基督信徒のなぐさめ」警醒社、1896(明治29)年12月1日<br>自序「基督信徒の慰」警醒社、1893(明治26)年2月25日<br>第二版に附する自序「基督信徒のなぐさめ」警醒社、1893(明治26)年8月14日<br>回顧三十年「基督信徒のなぐさめ」警醒社、1923(大正12)年2月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,320 字 · 100 页
時の悦を楽み、涙を隠し愁懼を包み、潔よく彼の門出を送りしごとく彼の遠逝を送らんのみと。
ああ余は死の学理を知り、また心霊上その価値を了れり、しかれどもその深さ、痛さ、悲さ、苦さはその寒冷なる手が余の愛するものの身に来り、余の連夜熱血を灌ぎて捧げし祈祷をも省みず、余の全心全力を擲ち余の命を捨てても彼を救わんとする誠心をも省みず、無慙にも無慈悲にも余の生命より貴きものを余の手よりモギ取り去りし時始めて予察するを得たり。
生命は愛なれば愛するものの失せしは余自身の失せしなり、この完全最美なる造化、その幾回となく余の心をして絶大無限の思想界に逍遙せしめし千万の不滅燈を以て照されたる蒼穹も、その春来るごとに余に永遠希望の雅歌を歌いくれし比翼を有する森林の親友も、その菊花香しき頃巍々として千秋に聳え常に余に愛国の情を喚起せし芙蓉の山も、余が愛するものの失せてより、星は光を失て夜暗く、鶯は哀歌を弾じて心を傷ましむ、富嶽も今は余のものならで、かつて異郷に在りし時、モナドナックの倒扇形を見、コトパキシの高きを望みし時、わが故郷ならざりしがゆえにその美と厳とは反て孤独悲哀の情を喚起せしごとく、この世は今は異郷と変じ、余はなお今世の人なれどもすでにこの世に属せざるものとなれり。