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きょうかいなきさべつ
境界なき差別
丘 浅次郎
「心理研究 第10巻」1916(大正5)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,992 字 · 18 页
五
いくらもある。大晦日と元日との間にも何となく判然たる境界があるごとき心持ちを禁じ得ない。
五
人間の思考力が、今日の程度までに進み、人間の知識が今日の分量までに増したのは主として言葉を用いて考えた結果であることを思えば、言葉が人間にとっていかに大切なものであるかは、わざわざ論ずるにおよばぬ。理科でも文学でも、宗教でも、芸術でも言葉を離れてはとうてい発達することはできぬであろう。しかし、その反対に、言葉のために誤られ、言葉のために無益なことに頭を悩ませられた方を考えると、これまたけっして少なくない。言葉のために誤られるとはすなわち境界のない所に境界があるごとくに思い込むことで、そのため今日までに幾人の大学者が無用な水掛論を闘わしたかとうてい数えることはできぬ。昔からの議論の中でいつまでも結着の付かぬものは、多くは、双方ともに境界のない所に境界ありと思い誤って、さてその境界はどこにあるかと、互いに論じ合うているもののようである。
いずれの方面でも、研究が進めば進むだけ、ますます細かく分解するようになるが、細かく分解すればするだけ、多くの境界線を仮想せねばならぬことになる。