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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
「今日から御厄介になります。」
形ばかりに膝をついて、誰へともなく云ってから、彼はすぐに荷物を二階へ運び初めた。辰代はそれを手伝って、なおその上に、室の中の整理を手伝おうとした。押入も畳もすっかり雑巾がけをしておいたこと、押入の中には新聞紙を敷いといたから、その上にそっと荷物をのせること、机は窓の下に据えるがいいこと、などといろんな注意をして、今にも自分から荷物へ手をつけそうにした。大学生はその親切を却って迷惑がってる様子で、しまいには坐り直して云った。
「有難うございました。後は自分でしますから、どうか構わないでおいて下さい。」
「それでは、」と辰代は素直に応じて、「少しお片付きになりましたら、階下においで下さいませ。お茶でもおいれ致しますから。手前共はこういう風でございまして、何にもお構い出来ません代りに、家の者同様に思って隔てなくして頂きます方が宜しいんでございます。」
「ええ、どうぞ。」と彼は云った。
その可笑しな挨拶には気にも留めないで、辰代は階段を下りていった。
階下では、澄子が中村に向って、昼間のことを話してきかしていた。そこへ辰代はいきなり横合から云い出した。