轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なつのよのぼうけん
夏の夜の冒険
平林 初之輔
「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,930 字 · 12 页
すると、そこの庶務に、どうもどっかで見たことのあるような人の顔を見出だした。それでどうしても思い出せなかったが、ふとした機会でその名前が刈谷長太郎ということを知ったときに、六七年前の記憶が一度に甦ってきた。
やっと、その男に近づく機会を得た時に私は早速たずねてみた。
――あなたお子さんはありますか?
――いいえ今はありません。
――前にはおありになったのですか?
――え、いい子でしたが、九つの時に死んじまいましたよ。生きているといま十六ですがね。
――それはお気の毒ですね、何かご病気ででも?
――怪我をしましてね、火傷をしちまったんですよ。
――あぶないですね、こたつででも?
――いいえ、夏でしたから、炬燵じゃないんです。瓦斯なんです。身体じゅう火ぶくれになってかわいそうな死にかたをしました。
男の眼は涙ぐんで、一言々々に昔を思い出す様子だった。
――奥さんとお二人じゃさびしいでしょうね。
――家内はありません。
――ではやっぱりご病気ででも……
――いいえ、死んだんじゃありません。はじめの家内は子供が四つの時にチブスで死んだんですが、二度目のは、子供がなくなった年に出てゆきました。