轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なつのよのぼうけん
夏の夜の冒険
平林 初之輔
「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,930 字 · 12 页
これは一九三〇年型の実話ではなくて、ごく古風な実話である。
今から十年ほど前私は内幸町のある会社につとめていた。その会社には、共産党の市川正一君、文芸戦線の青野季吉君、大竹博吉君のロシア問題研究所の仕事をしている時国理一君、外務省の板倉君、日日新聞の永戸君なども一しょにはたらいていたのだ。
その当時、時国は中里にすんでいた。私は田端にすんでいた。そして二人とも夜勤の番だったので、夕方の五時に出社して、夜中の十一時に社をひきあげることになっていた。二人とも、出社の時刻はおくれても、退社の時刻は一分間だっておまけをしないなまけ者だった。
夏のことであった。
内幸町の会社を十一時かっきりに出たのだから、駒込橋で降りた時は十一時半から十二時までの間であったことは間違いない。
駒込橋を渡った右側に小さいカフェがあった。名前は忘れた――いまでもあるかどうかは知らない。時国の話によると主人は絵かきだということで、下にも二階にも、壁間に怪しげな油絵の額が沢山かかっていた。
二人は時々そこへ寄ってビールを飲んだ。
その晩もそこへ寄った。誰の内閣だったか忘れたが、少なくも浜口内閣でなかったことはたしかで、十二時限り営業まかりならぬというようなお達しは、その頃は出ていなかったから、十二時頃でも喜んで私たちを迎えたのであった