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なつのよのぼうけん
夏の夜の冒険
平林 初之輔
「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,930 字 · 12 页
まだ初七日もたたないうちに出ていったんです。おはずかしい話ですが。
こう言いながら彼は私の顔をじろりと見たように思った。私もどきりとした。
子供の不思議な焼死――瓦斯の火で身体じゅうが火ぶくれになるようなことがあるはずはないのだ――それからすぐに母親の家出、しかも、それはまがいもなくあの年の夏だ。ことによるとあの次の晩のことかもしれぬ。私は、九つの子供が、母親に瓦斯で焼かれている光景、憎悪に燃える若い母親の顔を想像してぞっとした。
――あの二人のおせっかい者さえ出てこなければ、こんなことにはならなかったに……と言っているように見える話し手の顔はさらに気味が悪かった。彼は私の顔をよく憶えているのじゃあるまいか? あの時は帽子をきたままだったからまさかおぼえてはいまい。
私は舌が硬ばってその先をきく勇気はなかった。