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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

たすけようと思えば、いつでも、たすけられる」

中之島へ行こうと、豹吉は肚をきめた。

「亀公、じゃ、行って来るぜ」

と、豹吉はかけ出そうとした。

「兄貴、待ってくれ」

「なんだ」

「兄貴一人で行くのンか」

「当りきや。心配するな」

そう言ったかと思うと、豹吉はぱっと駈けだして行った。

ノッポの一徳――豹吉の大股では、梅田新道より中之島公園まで、五分もかからなかった。

「豹吉のやつ、臆れて、よう来ないじゃないか」

という気持を、一分長く相手に抱かせることは、十年自分の寿命を縮めるのと同じくらい、豹吉にとっては辛かったのだ。

それほど、自尊心が強かったのだ。いや、自尊心以外に、何がこの男に残っているだろうか。

だから、中之島公園の暗がりの中を一息に、図書館の前まで駈けつけた時、自分の到着を待っていたのは千日前の喫茶店の前で、自分を掏ろうとしたあの間抜けの掏摸一人ではなく、十数名に及ぶ隼団の団員だと判ると、豹吉は思わずにやりとしたくらい、ゾクゾグとうれしかった。

いわば、向う見ずだといってもいい。

「豹吉、よう来た。用はきかなくても、判ってるやろ」

「うん」

とうなずいた途端、豹吉はぐるりと取り巻かれてしまった。