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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页
「なんや、これは……」
「なんや、これは……いうて、済ましてるどころやないぜ、兄貴、これ読んで、びっくりせえへんのか」
「お前に千円やるのはまだ惜しいからな」
と、豹吉は笑った。
「ノンキやなア、兄貴は。これ、隼団からの果し状やぜ」
「判つてる。しかし、お前どうしてこれを……」
手に入れたのかと、きくと、亀吉は、
「知らん間にポケットへはいってたんや。その代り、あの復員軍人に返そう思てた二千円掏られてしもた」
「間抜けめ!」
と、豹吉はどなりつけたが、すぐ微笑して、
「――そやから、昼間ハナヤでお加代が云ったやろ。掏られんように気をつけろって……」
「あ、そやった!」
と、亀吉は頭を押えると、亀のようにすっと首が縮んだ。
豹吉は腕時計を見た。十時を三分過ぎていた。
「弱ったなア」
と、豹吉は呟いた。
「――雪子をたすけるか、中之島公園へ行こうか」
と、迷ったのだ。
出来れば、雪子をたすけたかった。しかし、いくら雪子が好きでも、青蛇団の豹吉ともあろうものが、女のことにかけて、果し状を怖がって逃げたと思われるのは、辛かった。
「臆病者だと思われるのはいやだ。それに、雪子の行先は、どうせ警察だと判ってるんだ。