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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

馬籠の荒町にある村社の鳥居のために檜木を背伐りしたと言って、その始末書を取られるような細かい干渉がやって来る。村民の使用する煙草入れ、紙入れから、女のかんざしまで、およそ銀という銀を用いた類のものは、すべて引き上げられ、封印をつけられ、目方まで改められて、庄屋預けということになる。それほど政治はこまかくなって、句碑一つもうっかり建てられないような時世ではあったが、まだまだそれでも社会にゆとりがあった。

翁塚の供養はその年の四月のはじめに行なわれた。あいにくと曇った日で、八つ半時より雨も降り出した。招きを受けた客は、おもに美濃の連中で、手土産も田舎らしく、扇子に羊羹を添えて来るもの、生椎茸をさげて来るもの、先代の好きな菓子を仏前へと言ってわざわざ玉あられ一箱用意して来るもの、それらの人たちが金兵衛方へ集まって見た時は、国も二つ、言葉の訛りもまた二つに入れまじった。その中には、峠一つ降りたところに住む隣宿落合の宗匠、崇佐坊も招かれて来た。この人の世話で、美濃派の俳席らしい支考の『三の図』なぞの壁にかけられたところで、やがて連中の付合があった。

主人役の金兵衛は、自分で五十韻、ないし百韻の仲間入りはできないまでも、