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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
三人は右を見、左を見して、本郷森川宿から神田明神の横手に添い、筋違見附へと取って、復興最中の町にはいった。
「これが江戸か。」
半蔵らは八十余里の道をたどって来て、ようやくその筋違の広場に、見附の門に近い高札場の前に自分らを見つけた。広場の一角に配置されてある大名屋敷、向こうの町の空に高い火見櫓までがその位置から望まれる。諸役人は騎馬で市中を往来すると見えて、鎗持ちの奴、その他の従者を従えた馬上の人が、その広場を横ぎりつつある。にわかに講武所の創設されたとも聞くころで、旗本、御家人、陪臣、浪人に至るまでもけいこの志望者を募るなぞの物々しい空気が満ちあふれていた。
半蔵らがめざして行った十一屋という宿屋は両国の方にある。小網町、馬喰町、日本橋数寄屋町、諸国旅人の泊まる定宿もいろいろある中で、半蔵らは両国の宿屋を選ぶことにした。同郷の人が経営しているというだけでもその宿屋は心やすく思われたからで。ちょうど、昌平橋から両国までは船で行かれることを教えてくれる人もあって、三人とも柳の樹の続いた土手の下を船で行った。うわさに聞く浅草橋まで行くと、筋違で見たような見附の門はそこにもあった。