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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

小屋掛けをした普請場の木の香の中に。

半蔵は寿平次に伴われて来た妻子をよろこび迎えた。会所の新築ができ上がったことをも寿平次に告げて、本陣の焼け跡の一隅に、以前と同じ街道に添うた位置に建てられた瓦葺の家をさして見せた。会所ととなえる宿役人の詰め所、それに問屋場なぞの新しい建物は、何よりもまずこの宿場になくてならないものだった。

寿平次は半蔵の前に立って、あたりを見回しながら言った。

「よくそれでもこれだけに工事のしたくができたと思う。」

「みんな一生懸命になりましたからね。ここまでこぎつけたのも、そのおかげだと思いますね。」

吉左衛門はこの二人の話を引き取って、「三年のうちに二度も大火が来てごらん、たいていの村はまいってしまう。まあ、吾家でも先月の三日に建前の手斧始めをしたが、これで石場搗きのできるのは二百十日あたりになろう。和宮さまの御通行までには間に合いそうもない。」

その時、寿平次が助郷願書の件で調印を求めに来たことを告げると、半蔵は「まあ、そこへ腰掛けるさ。」と言って、自分でも普請場の材木に腰掛ける。お民はそのそばを通り過ぎて、裏の立ち退き場所にいる姑(おまん)の方へと急いだ。