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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
それには青山吉左衛門忰、年寄役小竹金兵衛忰、両人にて役所へまかりいでよとある。付添役二人、宿方惣代二人同道の上ともある。かねて願って置いた吉左衛門らの退役と隠居がきき届けられ、跡役は二人の忰たちに命ずると書いてないまでも、その剪紙の意味はだれにでも読めた。
半蔵も心を決した。彼は隣家の伊之助を誘って、福島をさして出かけた。木曾路に多い栗の林にぱらぱら時雨の音の来るころには、やがて馬籠から行った惣代の一人、桝田屋の相続人小左衛門、それに下男の佐吉なぞと共に、一同連れだって福島からの帰路につく人たちであった。彼が奥筋から妻籠まで引き返して来ると、そこの本陣に寿平次が待ち受けていて、一緒に馬籠まで行こうという。
「寿平次さん、とうとうわたしも君たちのお仲間入りをしちまいましたよ。」
「みんなで寄ってたかって、半蔵さんを庄屋にしないじゃ置かないんです。お父さんも、さぞお喜びでしょう。」
寿平次も笑ったり、祝ったりした。
宮様御降嫁の当時、公武一和の説を抱いて供奉の列の中にあった岩倉、千種、富小路の三人の公卿が近く差し控えを命ぜられ、つづいて蟄居を命ぜられ、すでに落飾の境涯にあるというほど一変した京都の方の様子も深く心にかかりながら、半蔵は妻籠本陣に一晩泊まったあとで、また連れと一緒に街道を踏んで行った。