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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
それを半蔵は自分が奔走する街道の上に読んだ。彼も責任のあるからだとなってから、一層注意深い目を旅人の動きに向けるようになった。
本馬六十三文、軽尻四十文、人足四十二文、これは馬籠から隣宿美濃の落合までの駄賃として、半蔵が毎日のように問屋場の前で聞く声である。将軍上洛の日も近いと聞く新しい年の二月には、彼は京都行きの新撰組の一隊をこの街道に迎えた。一番隊から七番隊までの列をつくった人たちが雪の道を踏んで馬籠に着いた。いずれも江戸の方で浪士の募集に応じ、尽忠報国をまっこうに振りかざし、京都の市中を騒がす攘夷党の志士浪人に対抗して、幕府のために粉骨砕身しようという剣客ぞろいだ。一道の達人、諸国の脱藩者、それから無頼な放浪者なぞから成る二百四十人からの群れの腕が馬籠の問屋場の前で鳴った。
二月も末になって、半蔵のところへは一人の訪問者があった。宵の口を過ぎたころで、道に迷った旅人なぞの泊めてくれという時刻でもなかった。街道もひっそりしていた。
「旦那、大草仙蔵というかたが見えています。」
囲炉裏ばたで※造りをしていた下男の佐吉がそれを半蔵のところへ知らせに来た。