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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
旅の笠、金剛杖、白い着物に白い風呂敷包みが、その薄暗い空気の中で半蔵の目の前に動いた。
「どうも、お粗末さまでございました。」
と言って見送る宿の人の声もする。
その明け方、半蔵は朝勤めする禰宜について、里宮のあるところまで数町ほどの山道を歩いた。社殿にはすでに数日もこもり暮らしたような二、三の参籠者が夜の明けるのを待っていて、禰宜の打つ大太鼓が付近の山林に響き渡るのをきいていた。その時、半蔵は払暁の参拝だけを済まして置いて、参籠のしたくやら勝重を見ることやらにいったん宿の方へ引き返した。
「お師匠さま。」
そう言って声をかける勝重は、着物も白に改めて、半蔵が山から降りて来るのを待っていた。
「勝重さん、君に相談がある。馬籠を出る時にわたしは清助さんに止められた。君のような若い人を一緒に参籠に連れて行かれますかッて。それでも君は来たいと言うんだから。見たまえ、ここの禰宜さまだって、すこし無理でしょうッて、そう言っていますぜ。」
「どうしてですか。」
「どうしてッて、君、お宮の方へ行けば祈祷だけしかないよ。そのほかは一切沈黙だよ。寒さ饑じさに耐える行者の行くところだよ。