轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
二
法鼓、朝課はあと回しとして、まず鐘楼の方へ行った。恵那山を最高の峰としてこの辺一帯の村々を支配して立つような幾つかの山嶽も、その位置からは隠れてよく見えなかったが、遠くかすかに鳴きかわす鶏の声を谷の向こうに聞きつけることはできた。まだ本堂の前の柊も暗い。その時、朝の空気の静かさを破って、澄んだ大鐘の音が起こった。力をこめた松雲の撞き鳴らす音だ。その音は谷から谷を伝い、畠から畠を匍って、まだ動きはじめない村の水車小屋の方へも、半分眠っているような馬小屋の方へもひびけて行った。
二
ある朝、半蔵は妻のそばに目をさまして、街道を通る人馬の物音を聞きつけた。妻のお民は、と見ると、まだ娘のような顔をして、寝心地のよい春の暁を寝惜しんでいた。半蔵は妻の目をさまさせまいとするように、自分ひとり起き出して、新婚後二人の居間となっている本陣の店座敷の戸を明けて見た。
旧暦三月はじめのめずらしい雪が戸の外へ来た。暮れから例年にない暖かさだと言われたのが、三月を迎えてかえってその雪を見た。表庭の塀の外は街道に接していて、雪を踏んで行く人馬の足音がする。半蔵は耳を澄ましながらその物音を聞いて、かねてうわさのあった尾張藩主の江戸出府がいよいよ実現されることを知った。