轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
だ。同じ駅路の記憶につながれている二人の隣人は、まだまだ徳川の代が平和であった時分のことを忘れかねている。新茶屋に建てた翁塚、伏見屋の二階に催した供養の俳諧、蓬莱屋の奥座敷でうんと食ったアトリ三十羽に茶漬け三杯――「あの時分」を思い出させるようなものは何かにつけ恋しかった。この二人には、山家が山家でなくなった。街道はいとわしいことで満たされて来た。もっとゆっくり隣村の湯舟沢や、山口や、あるいは妻籠からの泊まり客を家に迎え、こちらからも美濃の落合の祭礼や中津川あたりの狂言を見に出かけて行って、すくなくも二日や三日は泊まりがけで親戚知人の家の客となって来るようでなくては、どうしても二人には山家のような気がしなかった。
その年の祭礼狂言をさかんにするということが、やがて馬籠の本陣で協議された。組頭庄兵衛もこれには賛成した。ちょうど村では金兵衛の胆煎りで、前の年の十月あたりに新築の舞台普請をほぼ終わっていた。付近の山の中に適当な普請木を求めることから、舞台の棟上げ、投げ餅の世話まで、多くは金兵衛の骨折りでできた。その舞台は万福寺の境内に近い裏山の方に造られて、もはや楽しい秋の祭りの日を待つばかりになっていた。