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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

02 第一部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,315 字 · 25 页

青空文庫

」

清助は快活に笑って、青々と剃っている毛深い腮の辺をなでた。二間続いた隠居所の二階で、おまんが茶の用意なぞをする間に、吉左衛門はこう切り出した。

「まあ、清助さん、その座蒲団でもお敷き。」

「いや、はや、どうも理屈屋がそろっていて、どこの宿場も同じことでしょうが苦情が絶えませんよ。大旦那のように黙って見ていてくださるといいけれども、金兵衛さんなぞは世話を焼いてえらい。」

「あれで、半蔵のやり方が間違ってるとでも言うのかな。」

「大旦那の前ですが、お師匠さまの家としてだれも御本陣に指をさすものはありません。そりゃこの村で読み書きのできるものはみんな半蔵さまのおかげですからね。宿場の問題となると、それがやかましい。たとえばですね、問屋場へお出入りの牛でも以前はもっとかわいがってくだすった、初めて参った牛なぞより荷物も早く出してくだすったし、駄賃なぞも御贔屓にあずかった、半蔵さまはもっとお出入りの牛をかわいがってくだすってもいい。そういうことを言うんです。」

「そいつは初耳だ。」

「それから、宿の伝馬役と在の助郷とはわけが違う、半蔵さまはもっと宿の伝馬役をいばらせてくだすってもいい。