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よなきてっこつ

夜泣き鉄骨

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,273 字 · 31 页

青空文庫

「わたしは、ナなんにも、存じませんです。しかし、クレーンのスウィッチは、必ず切って帰りますで、真夜中に、ヒョロヒョロ動き出すなんて、そんな妙なことが……」

そこまで云った政は、発作みたいな様子となり、言葉のあとをブツブツ口の中で呟いて、それから急に気がついたかのように、ワナワナ慄える両手を、周章てて背後に隠したのだった。

「よォし。今夜は、一つ正体を確かめてやろう。いいか、みんな夜中の十二時を廻ったら、裏門前に集るんだ!」

2

合宿所の、三階の、廊下を、パタパタと音をさせて、近づいてくる跫音があった。

「組長さん、おいでですか――」

その跫音は、「舎監居間」と書いた木札を、釘で打ちつけてあるわしの室の入口の前で停るが早いか、そう、声をかけたのだった。

「おう。誰かい」

「栗原です。倉庫係の栗原ですて」

「栗原? 栗原が、なんの用だッ」

「へえ、ちょっと工場の用なんで……」

「なにッ。工場の用て、どんなことだか云ってみろ」

「へえ、実は――」栗原は、言い淀んでいる風だった。「先日お持ちになりました乙型スウィッチが、急に入用になりましたんで、いただきに参ったんですが……」